ブックタイトルアイパル通信(2021年 冬号)
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アイパル通信(2021年 冬号)
香川県内で国際交流や多文化共生の分野で活躍されている方にスポットを当て、紹介するコーナーです。 今回ご紹介する田た村むら美み津つ子こさん(東かがわ市出身)は、約14年間幼児教育に従事された後、アフリカのマラウイ共和国で青年海外協力隊員として2年間活動し、帰国後JICA四国での勤務を経て、現在は技能実習生の受入支援等を行っている協同組合で勤務されています。マラウイでの国際協力活動を継続しながら、県内で暮らす技能実習生が地域社会とつながり、日本での生活がよりよいものになるようにと精力的に取り組まれている田村さんに現在の活動やその思いについてお話を伺いました。現在の仕事について教えてください。 私が働いているヒューマンリング協同組合は、ベトナムやインドネシアからの技能実習生を受け入れ、実習が適切に行われるよう、受入企業を監理・サポートする監理団体です。私は、受入れの手続きや入国後の講習、派遣先企業との調整、生活面でのサポート等の実習生の受入れに関わる業務を幅広く担当しています。この仕事を始めることになったきっかけは? 私は、2010年から2年間、青年海外協力隊員としてアフリカのマラウイで活動し、その後、JICA四国で国際協力に関わる仕事をしていました。業務の一環として協力隊OBへの就職支援にも携わっていたのですが、その中で、現在の勤務先である協同組合の理事と出会ったことがこの仕事に就いたきっかけです。理事の「技能実習制度が国内の労働力を補うという日本にとってだけ都合のよい制度であっては意味がない。実習生が日本に来てよかったと思え、日本のファンが増えていくような事業にしていきたい」という思いに共感し、入社を決めました。 そこには、自分自身のマラウイでの経験も影響しています。私は外国語学習が苦手ということもあり、マラウイに着任した当初は緊張と不安で人間関係に苦労することもありました。そんなとき、身近な人たちが優しく声をかけ、私を助けてくれました。マラウイは資源に乏しく貧しい国ですが、‘Warm Heart of Africa(アフリカの温かい心)’と呼ばれるように、人々はおおらかで、笑顔を絶やすことなく、互いに助け合って生活しています。人と接するとき、壁をつくらず、言葉や習慣などが異なる自分に対しても、ありのままを受け入れてくれているように感じられ、「人」という素晴らしい財産に溢れるこの国が大好きになりました。家族や友人と離れ、異文化の中で生活する技能実習生の苦労や寂しさはよくわかります。マラウイの人たちが自分にしてくれたように、私も技能実習生をサポートし、日本を好きになってほしいと願い、活動しています。現在取り組んでいる活動について教えてください。 新型コロナウイルスの影響で現在は少し状況が変わっていますが、それ以前には、技能実習生の数は年々増加し、香川県では在住外国人の半数近くを占めています。それにも関わらず、実習生と地域社会との接点は非常に限られていて、孤立しがちな状況です。そこで、ポトラックパーティー(食べ物を持ち寄るパーティー)やスポーツイベントを行ったり、地域の清掃活動に参加する機会をつくったりと、実習生が地域の方と知り合い、交流できるよう努めています。そのほか、小学校等で実習生の母語で読み聞かせを行う機会をつくったり、私が講演を行う際に、体験談を話してもらったりということもしています。昨年は、実習生を含め、外国人住民のことを広くみなさんに知っていただきたいと思い、在県外国人から作品を募集し、アート展(P2に掲載)を開催しました。やりがいを感じるのはどんなときですか? 地域の方々との交流等を通じて実習生の楽しそうで生き生きとした姿が見られたときです。当初、受入企業の方に地域の方々と交流することの意義を理解していただくのが難しいこともありましたが、交流の様子や実習生の喜ぶ姿を見るうちに、次第に快く協力いただけるようになってきました。 現在の仕事に就くまで技能実習生と関わることはなかったのですが、実際に関わるようになってから、彼らが受入企業の中でさまざまなプラスの変化をもたらす素晴らしい人材だということに気づきました。企業の方から「実習生の笑顔とあいさつで現場が明るくなり、従業員同士の会話も増えて、会社全体の雰囲気がよくなった」「これまで曖昧だった作業工程をわかりやすくマニュアル化する等社内改革のきっかけとなった」といった感謝や喜びの声を聞くと、励みになります。私自身も実習生と会うと、その明るさやたくましさに元気をもらうことが多いです。マラウイでも継続的に活動をされていると聞きましたが、どんな活動ですか。 協力隊には、それまでの経験を活かし、「幼児教育」という職種で参加しました。首都から50キロほど離れた「ナミテテ」という町にある、現地NGOが運営する幼稚園で子どもたちの保育や先生たちへの指導をすることになっていたのですが、一旦通いはじめても、子どもたちはだんだん来なくなり、なかなか定着しませんでした。そして、その背景には、保護者の教育への関心の低さや貧困の問題があることがわかりました。そこで、母親学級を開催し、教育の必要性を理解してもらえるよう働きかけるとともに、母親たちの経済的自立を支援するため、手芸グループ「ナミテテマザーズ」を立ち上げ、お土産物の制作と販売を始めました。「チテンジ」というアフリカらしいカラフルな布を使ったバッグやポーチなどをつくり、現地のバザーやアンテナショップ等で販売するほか、日本でも友人・知人を通じて販売しています。また、協力隊時代の同僚と協力し、昨年10月に現地で幼稚園を開園しました。協力隊時代に作成した指導書を活かして現地の子どもたちに教育の機会を提供していきたいと考えています。これからの目標は? 実習生の一人が、通勤時に通りかかる畑で作業をしている近所の方と出会い、毎日あいさつしたり、ときに野菜をもらったりするようになったという話を嬉しそうにしてくれたことがあります。こうした日常生活における何気ない地域の方とのつながりが、香川のあちこちで生まれていくよう、活動を続けていきたいと考えています。また、技能実習制度は、受入れの実態やこれまでの問題点等を踏まえ、制度自体がどんどん変わっている状況です。受入れが適切に行われ、実習生が安心して日本で生活できるよう、制度の変更点等をきちんと理解し、受入企業の方に伝えていけるよう努めたいです。マラウイでの活動については、現地の同僚と協力しながら、開園したばかりの幼稚園を何とか軌道に乗せたいと思います。 香川でもマラウイでも人々の笑顔が広がっていくよう、自分にできることに取り組み続け、10年後、リタイアした後には、それまでに関わった実習生たちの故郷やマラウイを訪れながら、のんびりとした時間を過ごすことが今の私の夢です。香川のみなさんへのメッセージをお願いします。 世界は楽しくて、おもしろいです!私は海外に出ることで、自分の知らない世界を知り、新しい「自分」を発見することができました。しかし、これは海外に限ったことではないと思います。日本にいても、地域に暮らす外国の人々と関わることで、きっと新しい発見ができるはずです。さまざまな人と出会い、異なる文化や価値観にふれ、視野を広げて、一緒にわくわくしましょう!この「人 」に注目香川の未来につながるストーリーNo.5!津田の海岸で砂浜運動会。技能実習生と地域の人々が一緒に楽しみました!技能実習生派遣先の企業にて「ナミテテマザーズ」のみなさんと技能実習生と河津桜を鑑賞開園した幼稚園に通う子どもFacebook https://www.facebook.com/mitsuko.tamura.9田村さんの活動についてより詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください!アイパル通信 2020 冬号 5