ブックタイトルTAKAMATSU ART LINK　令和2年度報告書

概要

TAKAMATSU ART LINK　令和2年度報告書

「間（あいだ）：時間・空間・人間（じんかん）」多様性という言葉が、社会に馴染んできた今だからこそ、障がいのある人が生み出す世界観をいかに型にはめずに寛容に受け止めることができるかが問われていると感じています。そもそも、「障害」とは人と人との間、すきまに生じるもの。とすると、人と人との関係性、まさに「間（あいだ）」がおのずとテーマになってきたのです。障がいのある人のある意味制約された表現をする人とアーティストのコラボレーションは、常に新しい概念を生み出しています。これを地域コミュニティに還元していくことで、それぞれの人がもつ可能性の発掘、オルタナティブな主体性形成が図られると。また、アートのもつ深遠な魅力が日常生活に反映されることにもなり、アートの価値を再認識できる。創造性には他者との関係性が絡んでおり、芸術文化でしか見えてこないつながりが、アートで可視化されていくのではないか。各施設でのアートリンクで獲得した「まなざしの力」は、多様性を寛容に包括する力であると感じています。そして、分野を横断したソーシャル・インパクト（価値の共創）こそが、コロナ禍の今、必要不可欠であると考えています。まちの未来をつくる私たちは、現代社会では、かつてのようなモノにおいて成長を遂げるよりも、感性や魂の深さにおいて成長を遂げることが重要な意味を持っていると考え、人と人、人と地域、人と自然が交歓し、あらゆる側面のつながりを恢復させることを活動のテーマと考えております。その鍵を握っているのがアートであり、そのポテンシャルを活かすことで新しい価値を創造できると。障がい故に創造性の芽をもつ人、自由な発想をする人たちは、まさに概念をもっている人。その人たちの存在にアートの視点で関わることで創出できた魅力こそが、地域を生き生きと変えていく力です。私たちは、柔らかい感受性の高い寛容な成熟社会の創造を目指し、今後も活動していきたいと思っています。最後になりましたが、この事業の実施に際し、お世話になりました関係者の皆さまに心から感謝申しあげます。田野 智子（NPO 法人ハートアートリンク代表理事）表現活動を通して可能性を開花させる障害福祉サービス事業所等にアーティストを継続的に派遣する「高松市障がい者アートリンク事業」では、絵画や美術、陶芸、ダンスや音楽パフォーマンスなど様々な表現活動が展開されています。施設でのアートリンクは、ワンダーな瞬間、新しい出会いの連続です。日常の動きがダンスになったり、繰り返しつぶやく言葉から曲が生まれたり。アートリンクに参加しているアーティストと施設のメンバーの関わりは、教える・教えられるという関係ではなく、ワークショップ形式のフラットな立場でつながっていきます。それぞれに回数を重ねていくうちに、「自分の内から出る、なんだかやりたいことを見てくれる人がいる」という安心や信頼、そして表現者としての自信が芽生えています。その瞬間こそが、アートの持つ不易な力が、私たちに「あるがままでいいんだよ」とそれぞれの価値が社会の中でつながっていくときであり、一人ひとりが社会に多様に関わり参画するという概念（full engagement society）が地域に浸透していくとき。アートリンク本法人は2004 年度から、障がいのある人とアーティストがペアになり、約半年間関わりながら制作する「アートリンク・プロジェクト」を始めました。一人では創ったことがないことやモノを二人の世界観、関係性で創り上げ発表していきます。一人ひとりの個性やこだわりは様々です。アートリンクでは、その個性やこだわりを「その人だからこその輝き」と捉えています。障がいのある人の内的欲求を探る旅のように時間をかけて。その後「アートリンク・プロジェクト」はフロリダ州セント・ピーターズバーグのNPO との国際交流事業へと発展しました。そして、セント・ピーターズバーグと姉妹都市である高松市でも、2010 年から瀬戸内国際芸術祭に伴い「アートリンク」を開催し、2014 年から「高松市障がい者アートリンク事業」として定着しました。一人ひとりの文化芸術活動による地域創造です。TAKAMATSU UNLIMITED ART LINKアートはリミットを超える行為であり、新しい概念 や価値を創造すること障がいのある人たちの表現活動で生み出される多様 で型にはまらない世界は、まさにUnlimited である。かいふく03 | | 04