ブックタイトルTAKAMATSU ART LINK 令和元年度報告書

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概要

TAKAMATSU ART LINK 令和元年度報告書

床に広げた帆布にクレヨンで彩色している。陽だまりが広がるような感覚。アーティストの打つドラムが響く。身体が反応して動き始めようとする緊張感。風船、和紙を素材にして遊びを開発していく。これもダンス? 次第に高揚していく顔。見たことがないものを描く。画面に立ち現れる世界に、スタッフも歩み寄ってくる。13 か所の施設でのアートリンクは、ワンダーな瞬間、新しい出会いの連続です。アートリンクに参加しているアーティストと施設のメンバーは、ワークショップ形式のフラットな関係性で繋がっていきます。施設それぞれに回数を重ねていくうちに、「自分の内から湧き上がる、なんだかやりたいことに正面から向き合ってくれる人がいる」という、明確な宛先がある安心や信頼、そして表現者としての自信が芽生えてきました。その環境の中で、アーティストが一人で考える世界を超えて、ふとした瞬間に見せる個々の奥に潜む面白さの発見をしたり、想像だにしていなかった作品が立ち現れたりすることがありました。それこそが、アートの持つ不易な力が、私たちに「あるがままでいいんだよ」とそれぞれの価値がつながっていくときであり、一人ひとりが社会に多様に関わり参画するという概念(full engagement society)が浸透していくときなのです。一人ひとりの個性やこだわりは様々です。アートリンクでは、それを障がいの有無を超えて「その人だからこその輝き」と捉えて制作していきます。障がいのあるメンバーもアーティストも、表現者として内に込めた欲求を探る旅のようにリミットを超えていきます。表現とは、内に秘めていることを外に表出することだけではなく、そこにあるものとの葛藤ともいえます。毎回のアートリンクの時間の後は、大きな仕事をやり終えたような顔に出会います。混沌としたこの状況。作品が生まれるまでのプロセス。一つに括れない、順番なんて決められない深い面白さ。多様性という言葉が、社会に馴染んできた今だからこそ、障がいのある人が生み出す世界観を寛容に受け止めることができるかが問われているのです。まさにアートの視点で、型にはまらない多様な世界観を受け止めることができる「柔らかい感受性の高い寛容な成熟社会」を創造していきたいと思います。多島美にして、一つずつ入り江に名称がある瀬戸内海。その海のように多様な価値を柔軟に受け入れ、新たな可能性を社会に還元していくことこそが、文化の継承とクリエーションに繋がると考えております。私たちは、現代社会では、かつてのようなモノにおいて成長を遂げるよりも、感性や魂の深さにおいて成長を遂げることが重要な意味を持っていると考え、人と人、人と地域、人と自然が交歓し、あらゆる側面のつながりを恢復させることを活動のテーマと考えております。その鍵を握っているのがアートであり、そのポテンシャルを活かすことで新しい価値を創造できると。障がい故にイマジネーションの芽をもつ人、自由な発想をする人たちは、まさに概念をもっている人であり、さらにアーティストと関わることで、より魅力を創出できていると考えています。最後になりましたが、この事業実施に際し、お世話になりました関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。田野智子(NPO 法人ハートアートリンク代表理事)アートはリミットを超える行為であり、新しい概念 や価値を創造すること障がいのある人たちの表現活動で生み出される多様 で型にはまらない世界は、まさにUnlimited である。かいふく03 | | 04