ブックタイトル高松市障がい者アートリンク事業 平成30年度報告書

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概要

高松市障がい者アートリンク事業 平成30年度報告書

アートはリミットを超える行為であり、新しい概念や価値を創造すること障がいのある人たちの表現活動で生み出される多様静まり返った部屋に、紙の上をすべる鉛筆の音が響く緊張感。会話をするようにドラムをたたき、高揚していく顔。粘土の塊が、茶器に変わっていく指先の美しい動き。12か所の施設でのアートリンクは、ワンダーな瞬間、新しい出会いの連続です。アートリンクに参加しているアーティストと施設のメンバーの関わりは、教える・教えられるという関係ではなく、ワークショップ形式のフラットな立場で繋がっていきます。施設それぞれに回数を重ねていくうちに、「自分の内から出る、なんだかやりたいことを見てくれる人がいる」という安心や信頼、そして表現者としての自信が芽生えてきました。その環境の中で、アーティストが一人で考える世界を超えて、「繰り返し描かれる絵や会話」の奥に潜む面白さの発見や、「どうにも真似しようがないもの」が立ち現れたり、呼応する音やダンスの空間が輝いて見えたりすることもありました。その瞬間こそが、アートの持つ不易な力が、私たちに「あるがままでいいんだよ」とそれぞれの価値が社会の中でつながっていくときであり、一人ひとりが社会に多様に関わり参画するという概念(full engagement society)が地域に浸透していくときなのです。―私たちは、どう生きるべきなのか。―私たちは、生きている思いをどのように地域社会と関われば良いのだろうか。一人ひとりの個性やこだわりは様々です。アートリンクでは、その個性やこだわりを「その人だからこその輝き」と捉えて制作していきます。障がいのある人の内的欲求を探る旅のように時間をかけて。表現とは、それぞれの内に秘めていることを外に表出することだけではなく、そこにあるものとの葛藤ともいえます。多様性という言葉が、社会に馴染んできた今だからこそ、障がいのある人が生み出す世界観をいかに型にはめずに寛容に受け止めることができるかが問われているのです。で型にはまらない世界は、まさにUnlimitedである。―誰もがアーティストであるという状況を創り出す仕事。この事業の前提には、だれもが表現者になる可能性があるということがあります。障がいの有無や年齢にかかわらず、全ての人は「自分は何者なのか」「何をしたいのか」「どう生きていきたいのか」という心の叫びをもっています。だれもが表現者になれることをアートリンクで、表現を通して可視化していきます。「Artは、するもの」として。毎週の障がいのある人たちとのワークショップ形式で行われるアートリンクの時間は、実は、対象は施設のスタッフ、関わる地域の人、もっと言うならばすべての人が対象なのでは。となると、この事業は、障がいのある人が「既成概念を見直し、表現を通して社会のつながりをつくる」という、新しい仕事を一緒にしているのではないかと思えるのです。私たちは、現代社会では、かつてのようなモノにおいて成長を遂げるよりも、感性や魂の深さにおいて成長を遂げることが重要な意味を持っていると考え、人と人、人と地域、人と自然が交歓し、あらゆるかいふく側面のつながりを恢復させることを活動のテーマと考えております。その鍵を握っているのがアートであり、そのポテンシャルを活かすことで新しい価値を創造できると。障がい故にイマジネーションの芽をもつ人、自由な発想をする人たちは、まさに概念をもっている人であり、その人の存在そのものがアーティストと関わることで魅力創出できたともいえます。私たちは、型にはまらない多様な世界観を受け止めることができる「柔らかい感受性の高い寛容な成熟社会」を創造していきたいと思います。多島美にして、一つずつ入り江に名称がある瀬戸内海。その海のように多様な価値を柔軟に受け入れ、新たな可能性を社会に還元していくことこそが、文化の継承とクリエーションに繋がると考えております。この事業は、5年を経過し、毎年の活動を報告展示・発表してきました。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、様々な文化事業が各地域で展開されております。改めて、この報告書が、新しい活動を呼び起こすもととなるメディアとして活用されることを願ってやみません。最後になりましたが、この事業実施に際し、お世話になりました関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。田野智子(NPO法人ハートアートリンク代表理事)nlimited03 | | 04