ブックタイトル高松市障がい者アートリンク事業 平成30年度報告書

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高松市障がい者アートリンク事業 平成30年度報告書

『ピンクからの旅立ちの不思議』24色のクーピーの中から必ずピンクを手に取り、画用紙を一面ピンク色に覆っていく方がいます。他の色を進めてもピンク以外使わない。普段の生活からも特にピンクを好む片鱗は見当たらないとのこと。アートリンク事業の初期は、人を描くこともあり、ピンクは背景色として塗っておられたのですが、ある日、ピンクしか手に取らなくなったのです。ところが、今年の冬に変化が現れました。香川県三木町のシンボルキャラクターの「獅子家」のイラストを描く機会があり、お父さん獅子を描くお願いをすると描き始めてくれ、外的な要因でピンク以外の色を使用する機会が訪れたのです。ピンク以外のクーピーを手に取る姿を見たのは、実に3年ぶりでした。それ以降は憑き物が落ちたかのように、オレンジ、青などを使う。ピンクへの執着が嘘のように消えました。もともと、筆圧が強く、クーピーを早く減らしたい、なくしたいという描き方でしたが、いつの間にかピンクにとりつかれていたものの、要はどの色も減らしたいという原点に戻ったのかもしれません。もう1つ気になるのは、画面を塗り潰す前に、同系色でワンフレーズ文字を書くこと。尋ねてみても何もコメントなく、せっかく書いた言葉は同じ色に埋もれていきます。その言葉は様々で、仏滅と記したり、人名であったりなど非常に謎めいているのです。link08障害福祉サービス事業所かすがの里、あじさい×清水直人(美術家)ARTIST PROFILE清水直人/SHIMIZU naoto共通感覚(コモン・センス)の(コモン)のうちには2つの意味があります。1つは,社会のなかで人々が共通(コモン)の認識にのっとり判断する力(センス)という「社会的な共通性」です。もう1つは,諸感覚(センス)に相わたって共通(コモン)で,しかもそれらを統合する根源的感覚(共通感覚)です。対象的な認識によって捉えるのではなく、関与することにより、またはこの共通感覚をはたらかせることにより、作品を通して社会と人間のアクチュアリティー、時代性を問いたいと考えています。『似顔絵を描く』手早く描く楕円に、くるくると描かれる2つの丸。「何を描いたのですか?」と尋ねると、施設職員さんの名前を教えてくれる。どんどん顔を書き連ねる。その度に「これは誰?」と訪ねると、別の方の名前が出てくる。タレントなどの有名人などではなく、自分を取り巻く人々をイメージしているよう。そして、4、5人目には「私!」そして「お母さん、お父さん」と描いていく。3番目以降の順番はランダムのようだけれども、最初に挙げられる方はいつも同じ。そして、職員が異動になると、この名前と順番なども変わってくるのです。丁寧な言葉遣いと挨拶と、穏やかな人柄で、非常に学ぶことが多い方ですが、想像以上に繊細にコミュニケーションをとっていることが分かります。絵のクオリティなどとは別に、この方の周りとの関係性が、描かれる人たちによって顕在化されていく過程で、まだ、私の名前が出てこず、精進しなければならないと思うのです。25 | | 26