ブックタイトル高松市障がい者アートリンク事業 平成28年度報告書

ページ
4/60

このページは 高松市障がい者アートリンク事業 平成28年度報告書 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

高松市障がい者アートリンク事業 平成28年度報告書

障害福祉サービス事業所等にアーティストを継続的に派遣する「高松市障がい者アートリンク事業」は、3 年目を迎えました。今年度は、9 か所の施設が参加し、陶芸、絵画や美術、ダンスや音楽パフォーマンスなど様々な表現活動が展開されました。そして、瀬戸内国際芸術祭に併せ「高松アートリンクプロジェクト2016」も開催しました。障がいのある人とアーティストの5 組のペアが、2 人の継続的な関りで構築された関係性を作品にして展示しました。アーティストたちは、ペアの相手の日常の表現に注視し、「大好きなこと」「繰り返し行われること」「誰かに伝えたいこと」を追求しました。その行為の積み上げの結果は圧倒的な力となり、作品というかたちを借りて現れました。日々のアーティストと施設の人たちの関わりは、教える・教えられるという関係ではなく、ワークショップ形式のフラットな立場で繋がっていきます。回数を重ねて、「自分の表現をありのままに伝えても良い」という安心感や、「自分の内から出る、なんだかやりたいことを見てくれる」という信頼感が、各施設の空気を創っていきました。その環境の中で、アーティストが一人で考える世界を超えて、「どうにも真似しようがないもの」ができたり、「舞台に立つ」時にも自信を発揮させて輝いて見えたりすることもありました。その瞬間こそが、アートの持つ不易な力が、私たちに「あるがままでいいんだよ」とそれぞれの価値が社会の中でつながっていくときであり、一人ひとりが社会に多様に関わり参画するという概念(full engagement society)が地域に浸透していくときなのです。この事業の前提には、だれもが表現者になる可能性があるということがあります。障がいの有無や年齢にかかわらず、全ての人は「自分は何者なのか」「何をしたいのか」「どう生きていきたいのか」という心の叫びをもっています。だれもが表現者になれることをアートリンクで、表現を通して可視化していきます。「Art は、するもの」として。私たちは、現代社会では、かつてのようなモノにおいて成長を遂げるよりも、感性や魂の深さにおいて成長を遂げることが重要な意味を持っていると考え、人と人、人と地域、人と自然が交歓し、あらゆる側面のつながりを恢復させることを活動のテーマと考えております。その鍵を握っているのがアートであり、そのポテンシャルを活かすことで新しい価値を創造できると。障がい故にイマジネーションの芽をもつ人、自由な発想をする人たちは、まさに概念をもっている人であり、その人の存在そのものがアーティストと関わることで魅力創出できたともいえます。私たちは、型にはまらない多様な世界観を受け止めることができる「柔らかい感受性の高い寛容な成熟社会」を創造していきたいと思います。多島美にして、一つずつ入り江に名称がある瀬戸内海。その海のように多様な価値を柔軟に受け入れ、新たな可能性を社会に還元していくことこそが、文化の継承とクリエーションに繋がると考えております。最後になりましたが、この事業実施に際し、お世話になりました関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。田野智子(NPO 法人ハートアートリンク代表理事)アートはリミットを超える行為であり、新しい概念 や価値を創造すること障がいのある人たちの表現活動で生み出される多様 で型にはまらない世界は、まさにUnlimited である。かいふく03 | | 04